疲れた心を癒す名作「フィールド・オブ・ドリームス」、自分の心の声に耳を傾けられるかはあなた次第だ

「レインマン」に続き、私のベスト映画の一本、「フィールド・オブ・ドリームス」(1990年)を久しぶりに観た。いま精神的にそんな時期のよう。好きな映画を観て心を洗い直す、これも映画のなせるワザ。

 

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「シルバラード」(85年)、「ファンダンゴ」(85年)に続き主演した、ブライアン・デ・パルマ監督の「アンタッチャブル」(87年)が大ヒットし、ブレイクを果たしたケビン・コスナーが「さよならゲーム」(88年)に続いて主演した野球映画。

 

とはいえ普通の野球ものではなく、ファンタジーなのがミソ。監督2作目のフィル・アルデン・ロビンソンが、6年の歳月をかけて製作にこぎつけたという秀作だ。大学で出会ったアニーと結婚し、広大なトウモロコシ畑を営むレイ。ささやかながら妻と娘と幸せな日々を送っていたが、ある日の夕暮れに人生を一変させる“声”を聞く…。

 

脂の乗ったコスナーが声に導かれ、何かに取り憑かれたように行動を起こしていくレイを好演。さらに「ストリート・オブ・ファイヤー」(84年)のエイミー・マディガンに加え、「グッドフェローズ」(90年)のレイ・リオッタ、名優バート・ランカスターが実在の大リーガー役を演じ、味のある役者陣が脇を固めているのも見どころの一つ。

 

畑をつぶして作った野球場に過去に実在した思い出の大リーガーたちが現れるという奇想天外なストーリーだが、野球経験者としてはそれだけでなぜか胸が熱くなる。自己破産に追い込まれながらも、彼らのために野球場を作り、維持していくことに納得していたレイだったが、実は真の理由は別にあったというもの。このラストシーンは映画史に残る名シーンである。

 

人は誰しも大人になり、年を重ねていく中で、失敗や後悔を一つや二つ抱えている。中年になり、人生の折り返し地点に差し掛かった時にレイが聞いた“声”は、実は自分の中の心の声だったのだ。絶縁状態のまま亡くなった父親への思い。それぞれの父と息子にしか理解できない関係。言葉にしなくても、キャッチボールをするだけでお互いを許すことができる。

 

もちろん、現実の人生はそんなに甘くはないだろう。トウモロコシの収穫量が減れば、売上が減り、ローンが返せなくなり、生活できなくなる。近隣の人々から変人扱いされても無理はない。

 

でもこの映画は、人生の中で諦めてきたもの、目をつぶってきたもの、大切な何かを失ったことに人々が気づき、ひと時だけでも現実を忘れて夢に浸ってもいいじゃないかということを描いている。本当の自分の心の声が聞こえない人もいるだろう。聞こえても行動を起こせない人もいる。それでも自分を信じて行動できる人生を歩みたいものだ。

 

自分の人生や人間関係、家族との絆に悩んでいる人、壁にぶち当たっている人におススメの映画です。私の人生においても、壁に打ち当たった時などには、いつもこの“それを作れば、彼が来る”という台詞は心の中でリフレインしている。

トム・クルーズとダスティン・ホフマン名演が光る「レインマン」、あなたの人生観に変化を与えてくれる名作だ

久しぶりにトム・クルーズとダスティン・ホフマン共演の感動作「レインマン」を観た。ちゃんと見直したのは20年ぶりくらいだろうか。この作品は、私の映画人生に多大な影響を与えた一本である。

 

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「タップス」(1982年)、「アウトサイダー」(83年)、「卒業白書」(84年)で注目され、86年の「トップガン」「ハスラー2」で大ブレイクを果たした青春スターのトムが、演技もできることを証明するかのようにドラマ作品に取り組んだ一本。「ハスラー2」でのポール・ニューマンに続き、名優ホフマンとの共演が話題になった。

 

当時まだ中学1年生の私はもちろん劇場では観ていない。5歳上の姉がレンタルビデオ店でアルバイトをしていて、確かVHSのサンプル版をもらってきたことから、家で繰り返し観ることができたというもの。恐らく合計9回〜11回くらいは観ていると記憶している。

 

「トップガン」でトムにはまっていた私は、今度はどんな格好いい姿を見せてくれるのかと期待して観たのだが、観終わった後に純粋に心があたたかくなったのを今でも覚えている。監督は「グッドモーニング、ベトナム」のバリー・レビンソンで、音楽は今や映画音楽巨匠であるハンス・ジマーという布陣だ。

 

絶縁状態だった父親が死に、トム演じる息子チャーリーは遺産が舞い込むと期待し、喜び勇んで葬式に出席する。だが、チャーリーへの遺産はクラシックカーの1台のみ。他の遺産は第三者が相続することになっていて、そこでチャーリーは自分に兄がいたことを知る。しかも会いに行ってみると兄は自閉症で病院に入院していた—。

 

外車の輸入業者をしているチャーリーは自分勝手な男で、会社も破産寸前に追い込まれていた。そんな男が父親の死をきっかけに自閉症の兄と旅をすることになり、その道中で次第に心を通わせていく姿を描いていく。お金目当てだった男が、生きる意味、人生とは何か、孤独や家族と愛について自分を見つめ直していく物語は、中学1年生の私の心を揺さぶった。

 

自閉症の兄レイモンドを演じるホフマンの演技が素晴らしく、それにトムが見事に応えている。ハンス・ジマーの独特のテンポの曲に乗せて、アメリカを横断していく展開が、私の心も連れて行ってくれた。レビンソン監督の人間を見つめる眼差しがあたたかい。

 

80年代には、ハリウッドでこんな作品がちゃんと作られていたことに、改めて感服する。莫大な制作費を投入したヒーロー映画や3D、IMAX、4DX向けのアトラクション映画が作られる前の時代だ。80年代は私の青春時代だが、70年代のアメリカン・ニューシネマの名残がある古き良き時代だった。

 

この「レインマン」を観ると、こんな映画が作りたいと、改めて映画業界で頑張ろうと思わせてくれる。まだ未見の方には是非一度観て欲しい。あなたの人生観に変化を与えてくれる作品になることは保証する。