ジャッキー・チェンが遂にボリウッドと融合した新作「カンフー・ヨガ」は、世界のファンへ向けたサービス映画だ! 限界を超えて闘う勇姿をもう一度観たい!

ジャッキー・チェンが遂にボリウッドと融合した中国とインドの合作映画「カンフー・ヨガ」が、お正月映画として12月22日より公開されました。ジャッキーのカンフー映画を観て育った筆者としては、観ないわけにはいきません。

カンフーの達人でもある考古学者をジャッキーが演じ、インドをはじめ世界各国を股にかけた冒険を繰り広げるアクション・アドベンチャー作品。「サンダーアーム 龍兄虎弟」(86年)や「プロジェクト・イーグル」(91年)の流れを汲む、ジャッキーお得意のお宝をめぐるストーリーです。そこに映画大国インドのボリウッド要素がどのように絡んでくるのかが見どころの一つ。

 

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中国・西安市の博物館に勤務する名高い考古学者ジャックは、ヨガの達人で同じく考古学者のインド美女アスミタから歴史に隠された失われた財宝探しを持ちかけられます。約1000年前にインドと中国の間で起きた混乱の中で消えてしまった財宝を探すため、中国、インド、ドバイ、アイスランドと世界を巡って物語は展開していきます。

まさにカンフーあり、ヨガあり、カーアクションに加え、「インディ・ジョーンズ」ばりのアドベンチャー・アクションが笑いとともに展開。中国とインドの男優、女優をバランス良く配し、両国の文化や歴史にも配慮しながら事件が巻き起こり、最後には、ボリウッド映画のようにジャッキーや皆が一緒に踊って大団円を迎えるという落ちとなります。

香港(中国)から飛び出して世界の映画人として認められたジャッキーが、遂にインド映画と融合という到達には長年のファンとしてはとても感慨深いものがありました。映画は「アクション」であり、カンフー(功夫)はリズミカルな踊りの要素をもっていて、インド映画の歌って踊りまくる展開はどちらも同じだと言えます。

そういった意味で「カンフー・ヨガ」は上手くバランスをとった映画であり、ジャッキーの円熟味を生かした大衆向け娯楽作として、中国とインドの人口をもってすれば世界での大ヒットも頷けます。

しかし、やはりジャッキーアクションの全盛期を知っている筆者としては物足りないと言わざるを得ない作品でした。63歳になったジャッキーは頑張っていますし、よくこんなに動けるなあと感心するのですが、それ以上を期待するのはもう酷な話なのでしょうか。

ここ数年、常々アクションは引退と口にするジャッキーだけに、「カンフー・ヨガ」は一般的な世界のジャッキーファンへのサービス映画のようなものなのでしょう。

でも、コアなジャッキーファンとしては、とことん痛めつけられた末に、自分の限界を超えて敵やライバルを打ち負かしていく、ドラマやアクションに挑戦し続ける勇姿を、もう一度観てみたいと強く願います。

「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」の新展開とラストの鳥肌ものの驚異的な展開をあなたはどう捉えるか!? 劇場で確認するべし!

「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(15年)に続くシリーズ第8弾「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」が世界中で大ヒットを記録していますが、賛否両論を呼び、一部のスター・ウォーズファンからは批判されているようです。理由は、マーク・ハミル演じるルーク・スカイウォーカーとジェダイの伝統をぶち壊しているというもの。

 

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ネタバレありなので注意してお読みいただきたいのですが、前作「フォースの覚醒」の最後に登場したルークが新作でどんな活躍を見せるのか期待を胸に劇場へ駆けつけたのですが、はるばる会いにきたレイに渡されたライトセーバーを、ルークはいきなりぽいっと投げ捨ててしまうのです。これには正直度肝を抜かれました。

しかし、このシーンが新作の新たな世界観を象徴しているとも言え、さらにラストの驚異的な展開を盛り上げる結果になっていると私は捉えています。批判している一部のファンは、このルークの態度やジェダイの伝統を否定するような展開に戸惑っているのでしょう。

ライアン・ジョンソン監督がすでに語っているように、新作のテーマは登場人物たちの新たな「葛藤」です。「フォースの覚醒」を観て期待したり、想像した展開とはいかないのが新作の見どころでしょう。

眠っていた力が覚醒したレイは、ルークに出会い、そのフォースを研ぎ澄ましていきますが、同時に暗黒面にも誘惑されます。前作で父親ハン・ソロを殺めたカイロ・レンは、その力や野望を増大させていきますが、母親であるレイア・オーガナを殺すことには躊躇し、スノーク最高指導者に反旗を翻すという心の揺らぎをみせ、レイに仲間になるように手を差し伸べます。

一方、ルークは弟子であったカイロ・レンの秘めた力に驚き止めようとするのですが、暗黒面へ追いやってしまった自らの過ちを胸に隠居、ジェダイ騎士のフォースの力を否定するという設定。でも、レイと出会ったことで自らの役割を受け入れて、圧倒的な力を発揮します。

私が面白かったのはレイとカイロ・レンの新たな関係性。前作でライトセーバーを交えた2人は、その後、離れてはいても意識かで何度もつながり会話し、お互いの存在を強烈に認め合っていきます。今のところ兄弟でもない、愛し合ってもいない2人が今後手を取り合うことはあるのでしょうか。

もう一つはラストでルークがジェダイ騎士としてフォースの力を存分に発揮するシーン。絶体絶命に追いやられた反乱軍を寸でのところで救い出します。日本の武士道や精神世界にも通じるような描写にはニヤリとさせられます。

誰しもが持っている光と闇。映像技術の進歩による視覚的な面白さはもちろんですが、「スター・ウォーズ」シリーズが愛されているのは、この精神世界を「ジェダイ」や「フォース」、「ダークサイド」などに置き換えて描き出しているからでしょう。

新作ではこのルークやジェダイの扱いがこれまでのシリーズとはちょっと違和感があったことから批判につながっているにのだと思います。しかし、ヨーダによって焼き払われていたと思ったジェダイの教典(聖典)は実はちゃんと残されていたのではと思わせるシーンもあるので、次回作の第9弾に期待が高まります。

スティーブン・キング原作の映画「IT イット“それ”が見えたら、終わり。」は恐ろしさとともに感動が味わえる新時代のホラー映画か?!

洋画のホラー映画としては異例の大ヒットを記録している「IT イット“それ”が見えたら、終わり。」を観てきました。

高校生以上の若者が連れ立って映画館に詰めかけているということで、子ども受けを狙ったホラーなのだろうと甘くみていたのですが、なるほど、怖いだけでなく、映画としてしっかりと面白いではないですか。さすが、原作はスティーブン・キングの代表作のひとつ。1990年にはテレビドラマ化もされています。

舞台はアメリカの静かな田舎町なのですが、この町はいわくつきの歴史をもっていて、ある種都市伝説的な不穏な恐怖がうごめいているのです。しかも“それ”はピエロとして現れるではないですか。

子どもの頃、誰しもがもっていた“恐怖”。それはお化けに対するものかもしれないし、見えないものへの恐れ、暗闇の中の気配など。

しかしこの映画は、そういったものへの恐怖を描くだけでなく、生きていく上でそれぞれが持っている現実的な恐怖にも置き換えて描かれているところが多くの共感を呼んでいるようです。“それ”の恐怖を克服するために、仲間と力を合わせて立ち向かっていく展開は胸を熱くするものがあります。

映画としての視覚的な恐ろしさ、仕掛け、音、編集、特殊効果など、これでもかというくらいに畳み掛けてくるのですが、感心したのは脚本の面白さ。もちろんホラー映画特有のご都合主義的な展開も満載なのですが、それを差し引いても新しい感覚で訴えてくる物語の高まりとともに恐ろしさを味わえます。

 

IT イット“それ”が見えたら、終わり。

 

ちょっと最近生温い映画に飽きていた方には、おススメのホラー映画です。

アッバス・キアロスタミ監督の「24フレーム」から「映画とは何か?」を考える、映画を観る力が試される野心作

第18回東京フィルメックスのクロージング作品として、アッバス・キアロスタミ監督の「24フレーム」を鑑賞しました。

写真が撮影された前後ではどうなっているのか? そんなコンセプトに基づいて映画と写真の統合を試みたキアロスタミ監督の野心作です。

2016年7月に亡くなったイランの名匠は、本編完成前にこの世を去りましたが、何を想ってこの異色なテーマに挑戦したのでしょうか。

全編ほぼフィックスの114分。何パターンかのある決まったシチュエーションの中に、牛や鳥、波が打ち寄せる海辺や雪の舞う景色などが、24フレームにわけて映し出されます。

写真なのか絵なのか、映像なのか、観客は戸惑いながらもこのフレーム内の景色を眺めるのみです。

アメリカ映画や香港映画、日本映画以外の世界の映画を観はじめていた私にとって、キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」(87年)を観た時の衝撃は私の映画人生に大きな影響を与えています。

「こんな映画があるのか」「いや、これが映画なのだ」と、フィクションでもありノンフィクションでもあるようなこの映画を観終わった後に何とも言えない映画的な幸福感に包まれたこと、この映画を観た人生とそうでない人生は間違いなく異なると確信しました。

だからこそ「24フレーム」には正直戸惑いました。「これは映画なのか?」と。

しかし、「友だちのうちはどこ?」を観た時がそうであったように、キアロスタミ監督はまたしても私の既成概念を打ち崩してくれたのだと気づきました。

 

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「映画とはこういうものだ」というある種の自分の中の自信。これがないと映画評やニュース原稿は書けないし、映画をプロデュースすることもできません。

でも、私は「24フレーム」で映画を観る力を改めて試されたのだと思いました。この作品から何を受け取ったのか、まだ答えは出せていませんが、まさにキアロスタミ監督の遺言のように感じています。