日本におけるミニシアターブームの象徴的な一本、フランス映画の「アメリ」。今は閉館してなくなってしまった渋谷のミニシアター、シネマライズで2001年11月17日より公開され、連日劇場の前には長蛇の列ができるロングランの大ヒットを記録しました。
テレビのニュースでも取り上げられるほど社会現象化し、ミニシアター文化の確立に貢献。ファッションや食といったカルチャーにも多大な影響を及ぼしました。その後の女性のライフスタイルの憧れになったほか、劇中に出てくるスイーツ、クレームブリュレやそれを割るスプーンも大人気となり、未だにクレームブリュレ=「アメリ」と紐づけられるといっても過言ではないのではないでしょうか。
それまでのミニシアター作品のヒット作でも、1年近くロングラン上映して、多くても5億円を稼げば大ヒットと言われていたのが、単館(ミニシアター)から拡大し、最終的に全国で興収16億円を稼ぎ出しました。映画の買付額は定かではありませんが、企画書段階で買い付けていたらしく、相当低い金額であったことから、もの凄い利益率だったことが推測でき、ビデオなどの2次使用からの収益を多く、噂では配給会社の自社ビル「アメリビル」が銀座に建ったとも言われています。
作品はというと、神経質な両親の元で育ったアメリは、空想の中で遊ぶことと、こっそりと悪戯をすることが好きな女の子に。そんなアメリは22歳になって、モンマルトルのカフェで働きはじめるのですが、青年ニノに出会って恋心を抱きます。でも、どうしたらいいか分からず悪戯を仕掛けてしまうというもの。
「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」のジュネ&キャロのジャン=ピエール・ジュネ単独の初長編作品で、それまでのダークな作品世界とは打って変わって、オシャレで不思議な世界が展開。アメリを演じたオドレイ・トトゥはこの一本で日本でも大人気となりました。
そんな「アメリ」のプレスシートは大切に保管していたのですが、今読み返してもオシャレで可愛らしい、配給・宣伝会社のセンスがうかがえるものとなっています。
映画が一本当たればビルが建つくらい、インディペンデントの映画の配給ビジネスに夢が持てた時代の象徴でもありますね。アメリだけでなくちょっと変わった人たちがたくさん出てくるお話ですが、女性の心理と空想世界が融合した、映画でしか味わえない、ファンタジックな時間が楽しめる作品です。
2001年度作品/フランス映画/121分/ドルビーデジタルDTS
提供:ニューセレクト、テレビ東京、博報堂
配給:アルバトロス・フィルム