今日はある映画ブックを紹介したいと思います。芸文社から6月に発売された「懐かしき俺たちのアメリカン・ニューシネマ『青春を駆け抜けた名作が今甦る』」です。これは素晴らしいムックで、名作が詰まっています。
懐かしき 俺たちのアメリカン・ニューシネマ 「青春を駆け抜けた名作が今蘇る」 (GEIBUN MOOKS)
いわゆる1970年代の「アメリカン・ニューシネマ」は、私の映画人生に多大な影響を与えた作品が勢揃いしています。しかし、このムックの巻頭にある説明文によると、そもそも「アメリカン・ニューシネマ」という定義は存在しないというではないですか。
1960年代後半から70年代にかけて起こったハリウッドの新しいムーブメント。それまでのハリウッド映画のスタイルとは異なる自由に作られた、時代や当時の社会を反映した作品。物語のテーマだけでなく、伝統を破壊した制作スタイルも支持されたものでした。
でも、それはある特定の作家たちが明確な意図で行ったものではなく、その時代性が偶然に産み出したものだったというではありませんか。
「ニューシネマ」という言葉は、67年2月号「Time」に掲載された無署名の記事「映画における自由がもたらす衝撃」の使われたもので、この号で大きく扱われたアーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」(67年)のことを指すものだったというのが定説とのこと。
さらに「アメリカン・ニューシネマ」という言葉は、映画雑誌「キネマ旬報」の記事で使用されたのが最初で、日本独自のものとのこと。勉強不足でしたが、ということは、やはり「アメリカン・ニューシネマ」は傑作「俺たちに明日はない」がムーブメントのはじまりだと言えるということでしょうか。
しかし、「アメリカン・ニューシネマ」に定義などなく、定義できない、新しい、自由な当時の映画を「アメリカン・ニューシネマ」とするのならば、それはそれでまた映画好きどもでひと晩もふた晩も議論しながら飲み明かせることでしょう。
このムックで紹介されている「アメリカン・ニューシネマ」作品についても、それぞれ取り上げていきたいと思っています。いつ観ても、何度観ても心が震える素晴らしい作品に溢れています。