ソル・ギョングの叫び、イ・チャンドン監督の眼差し、「ペパーミント・キャンディー」を観ずして人生は終われない。ラストシーンは映画史に残る名シーンだ

約20年、韓国映画には未だに感動させられるとともに、嫉妬するほど素晴らしい映画が製作し続けられています。1999年のイ・チャンドン監督「ペパーミント・キャンディー」を最初に観た時は、感動のあまり全身が痺れたようになって、しばらく動けなかったのを覚えています。

ある男の半生と韓国現代史を重ね合わせながら、時間を遡る構成で描かれた傑作。一人の男が川の近くの鉄道で自殺しようとするという衝撃のシーンで始まるのですが、そこに至るまでの人生が逆再生のように描かれ、男が家族や仕事など全てを失ったことが次第に明らかになっていきます。

主演は韓国の名優ソル・ギョング。約20年前、まだ純朴だった学生時代へ戻ったラストシーンは映画史に残る名シーンと言えるでしょう。あの時に感じた風、匂い、太陽に光、そして純真な恋心。まだ夢も希望も持っていた主人公のなんとも言えない表情をソル・ギョングが見事に表現しています。

平凡な、純真だった男がいかにして運命に翻弄され、人生の残酷さを味わっていくのか。歳を重ねていく中で人はいかにして大切なものを失っていくのか。こんなはずではなかった人生を時代のせい、社会のせいにもできるかもしれないが、失ったものに気がついた時には、もう後戻りは出来なくなっていた…。

夢や希望を抱いていたはずの20年前のあの時の男の目が、思い返すと泣いているように見えるのは私だけだろうか。人生の残酷さをこんなにも静かに映画的に叩き付けてくる映画を私はそれまで観たことがありませんでした。あの日に戻りたいというソル・ギョングの悲痛な叫びが今も私の胸に響いてきます。

タイトルのペパーミント・キャンディーとは、ムン・ソリ演じる初恋の女性からもらったハッカ飴のことを指しているのもさらに感動を呼びます。映画だからこその表現方法を使って描くチャンドン監督の素晴らしい才能に感服せざるを得ません。

 

ペパーミント・キャンディー [DVD]

 

パンフレットやプレスシートはありませんが、DVDはもちろんコレクションしていて、時間があれば見返し、日常で何かに突き当たった時は、この映画のシーンが私の脳裏を過ります。それくら私の映画人生に影響を与えた一本です。

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