手に汗握り涙なしには観られないサバイバル・パニックアクション「新感染 ファイナル・エクスプレス」、韓国映画の心意気を目撃すべし!

まわりの映画人の間でも大評判のヨン・サンホ監督の韓国製サバイバル・パニックアクション「新感染 ファイナル・エクスプレス」を観てきました。お見事です。映画ってやっぱり面白いなと改めて思わせてくれる娯楽作でした。面白い映画が続くと、劇場から遠のきかけていた足が再び劇場へ向かいはじめますね。

韓国のアニメ界で注目を集めてきたサンホ監督が初めて手がけた実写長編映画ですが、初の実写長編とは思えないクオリティのの高さです。もちろん、アニメ的な表現、演出が効いているのだと思います。謎のウィルスの感染が発生し、ソウルとプサンを結ぶ高速鉄道の中にも飛び火、そこで引き起こされる恐怖と混沌を、緊迫感と疾走感で描きつつ、次第に涙が止まらない展開へと変貌を遂げる感動作です。ちなみに、前日譚となる物語がサンホ監督の長編アニメ「ソウル・ステーション パンデミック」(9月30日より公開中)で明らかになっているとのこと(こちらはまだ未見です)。

まず、脚本が良くできています。コン・ユ演じる主人公の父娘の関係が冒頭に描かれ伏線を張り、父娘が乗車する高速鉄道の出発間際に様子のおかしい若い女性が飛び乗ってくるところから何かが起こるとにおわせてくれます。そして、社内での爆発的な感染拡大から怒濤の展開となるのですが、父娘の他に、妊婦と夫、高校野球部員と女性マネージャー、身勝手な中年サラリーマン、乗務員など、キャラクターが立った者たちが逃げ、襲われて、それぞれのドラマを展開しながら感染し、見事に死んでいきます。そこに躊躇はなく、それだけに観客は「逃げ切ってくれ!」「お前はやられろ!」と各キャラに感情移入しながらハラハラ、ドキドキさせられっぱなしになるのです。意外な収穫は、妊婦役を演じたチョン・ユミの発見で、その美しさには心を打ち抜かれました。

それはそうと、そんな人間ドラマを盛り上げるのは、B級感を残しつつも感染者や疾走しクラッシュする鉄道シーンの高い映像表現です。感染者たちは気持ち悪いし、恐ろしい迫力で襲って来て絶体絶命と思いきや思わぬ弱点があったりして、観客を飽きさせません。ラスト近くの線路上で飛び重なり連なり追ってくる感染者たちの姿には拍手喝采の思いでした(怖いけど笑えます!)。

高速鉄道に乗り合わせた老若男女のドラマ、腕っ節の強いもの、頭が切れるもの、妊婦、子ども、バットを持った若者と彼女、自分だけ生き残ろうとする嫌な奴といった非常にわかりやすい登場人物たちを要所に配しながら観る側の予想を超える展開を用意している脚本は見事。コン・ユ演じる父親のラストの姿には、子どもを持つ一人の男として涙なしには観られません。

 

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こういったクオリティの高い、面白い映画を次々と作り続けている韓国映画には憧れを抱きつつも嫉妬してしまいます。結局製作費の違いでハリウッド映画には勝てっこないとハナから諦めてしまっているところが日本にはあるかもしれませんが、アイデアと志、そして腹を括って製作すればこれだけのものが作れるのだと韓国映画は証明しています。引用やリメイクを超えた作品をまずは一本作ること。それが大事なのだと思います。ハリウッド大作に少々飽き、違った刺激を求めている方におススメの映画です。

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