視覚的な刺激が得られる押井守監督の「アヴァロン」を観て、自分の現実(フィールド)を疑い、確かめろ!

今年は、士郎正宗さんの人気コミックを押井守監督が映画化したSFアニメの傑作「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995年)がハリウッドで実写映画化され、「ゴースト・イン・ザシェル」というタイトルで公開されました。

改めて押井監督の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」が世界に与えた影響の強さを知らしめる出来事だったと思います。もちろん、私も押井作品に影響を受けた一人であり、ファンの一人です。初めて「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」を観た時は、そのアニメ表現のリアルさと先進性、95年に時代を先取りしたネット世界の情報と物語の融合、そして哲学的な押井ワールドに圧倒され、何回観たのかもう数えてないほど繰り返し観ました。

私がいま手にしているのは、押井監督の実写作品「アヴァロン」(00年)のパンフレットです。これは堪らず購入しました。この作品は衝撃的に面白かったですね。押井監督がアニメを実写化(『アヴァロン』にアニメ版はないが)するとこんな映像世界になるんだと。それまで味わったことのない感覚を得られました。

パンフレットは縦36.5センチ、横26センチのワイド版で、見事なビジュアルインパクトのある一冊です。

「ここが私の現実(フィールド)だ」

「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」から5年、脚本の伊藤和典さんとともに練り上げられた設定は、仮想戦闘という世界、繰り返される現実と虚構の近未来。まったく新しい異世界が、重量感溢れる街並みやセピアカラーの映像によって描き出されます。観客をいい意味で裏切るような演出で視覚的な刺激を与えてくれます。

仮想戦闘の世界で殺された時の人物の消える表現、爆発した瞬間にカメラが横へ回り込むと物体が平面になっているという発想。私たちが普段見ているもの、既成概念を覆すような数々の表現に驚かされました。

ポーランド、日本、アメリカの精鋭スタッフが押井監督のもとに結集し、ポーランドで2カ月に及ぶオールロケを敢行。迫力あるゲーム内の戦闘シーンは、日本だけでは実現しなかったでしょう。

アニメ的な表現と実写とのデジタル融合。00年に押井監督はすでに挑戦していたのですね。象徴的に使われる押井監督の愛犬もご愛嬌です。

果たして我々は今、現実世界に生きているのか? 現実世界と思い込んでいる世界が実は仮想世界なのではないか? そんな常識が次第に曖昧になり、主人公は戦闘が繰り返される「仮想世界」の中で生きることを選んでいるように見えます。現実と非現実の境界線、繰り返される戦闘、擬体と肉体、意識と存在といったものが押井作品では繰り返し描かれます。

 

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押井監督が世界をどう捉えて見ているのか、考えているのか。自分のフィールドが果たしてどこなのか、問わずにはいられなくなります。川井憲次さんの音楽も相変わらず素晴らしく、押井ワールドと見事に融合しています。

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