クリストファー・ノーラン監督の革新的リワインド・ムービー「メメント」は“記憶”の映画だ

 2本目は「メメント」。何年ぶりにこのプレスシートを手に取ったのでしょうか。製作年は2000年、日本公開は01年11月3日です。この映画を初めて観た時の衝撃は今も良く覚えています。今やハリウッドの大ヒットメーカー、巨匠のひとりと言えるクリストファー・ノーラン監督の第2作。

白地に英語で「MEMENTO」とタイトルが記され、記憶が薄れていくように、その字体がパズルがバラバラになっていくようなデザインになっていて、くしゃくしゃになったポラロイド写真が一枚配置されて作品世界を表現しています。全部で18ページ(表紙と裏表紙は除く)。

愛する妻がレイプされた後に殺され、そのショックで前向性健忘という記憶障害になってしまった男が主人公で、なんと10分しか記憶が保てないということから、ポラロイド写真にメモを書き、体中に暗号のようなタトゥーを掘りながら犯人を探すという設定には、当時度肝を抜かれました。

しかも主人公の男レナードを「L.A.コンフィデンシャル」(97年)のガイ・ピアースが演じ、「マトリックス」(99年)のキャリー=アン・モスとジョー・パトリアーノ、スティーブン・トボロウスキーが共演という、今となればインディペンデント作品とは思えないキャスティング。

「パルプ・フィクション」(94年)、「ユージュアル・サスペクツ」(95年)、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(99年)など、新しい時代を切り開いてきたインディ映画を超える、ニューメディア世代のオリジナル作品として絶賛されました。何度でも繰返し観たくなる映画として評判となり、上映10週目にして全米興行成績で8位にランキングされるという異例のヒットを記録。ちなみに、「リワインド」とは録音テープなどの巻き戻しのことです。

一回観ただけでは理解できず、何度も観たくなるというこの映画の新しい力には、ノーラン監督の才能を感じずにはいられません。しかも格好いい。「memento」とは思い出、記念品、形見、気づかせるものといった意味があり、「memento mori」(ラテン語)は死の警告の意味というのもまた深い。

表紙裏の1ページ目には、劇中シーンをはめ込んだ4枚のポラロイド写真が配置され、2ページ目は一転して作品世界のように黒地に。3ページ目はイントロダクションで、4ページ目には全米紙、映画誌のレビューが掲載されています。

5ページ目から6ページかけて再びポラロイド写真が配置され、7から8ページはストーリーが掲載。9ページから10ページは三度目のポラロイド写真で、映画を思い出させてくれます。11ページは貴重なイントロダクション、12ページ目はノーラン監督へのインタビューが掲載されています。

さらに13ページ目からは白地に戻り、印象的なシーンのポラロイド写真が4枚レイアウトされ、14ページには評論家・布施英利氏の評論「記憶喪失の世界を疑似体験できる映画」が掲載されています。15ページはキャスト、16ページがスタッフ紹介となっていて、17ページ目はクレジット。映画と同様にこだわりを感じるプレスシートとなっています。

ノーラン監督作品は「記憶」がキーワードとなっており、映画装置と「記憶」の密接な関係を見事に描いています。「メメント」が久しぶりに観たくなりました。魂を揺さぶる、映画的な刺激が欲しい方におススメです。

 

メメント コレクターズ・セット [DVD]

2000年/アメリカ映画/カラー・モノクロ/113分/シネスコ/SDR
提供:東芝、アミューズピクチャーズ
配給:アミューズ・ピクチャーズ
日本公開:2001年11月3日

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