ポン・ジュノ監督の最新作「オクジャ okja」は“映画”か“コンテンツ”か!? Netflixオリジナル映画の可能性

ちょっとこの辺でブレイクということで、今回はNetflixで観たポン・ジュノ監督の最新作「オクジャ okja」の感想を率直に述べたいと思います。

ジュノ監督の「殺人の追憶」「母なる証明」は才気を堪能できる傑作で、大好きな韓国映画監督の一人です。しかも今作は大きな動物と少女の絆を描く作品ということで、「グエムル 漢江の怪物」も好きな私はこのためにNetflixの無料体験に申し込みました。

なるべくネタばれしないように書きますが、韓国の山間の家で暮らす少女ミジャと大きな動物が普通に平穏に散歩している冒頭の様子には「映画的」な興奮を覚えます。大きな動物の造形はCGだと思うのですが、違和感なく、本当にそこに生きている動物として成立しているあたりはさすがです。このオクジャをめぐっていろいろなことが巻き起こっていくのがこの作品の物語展開なのですが、やはりシンプルに面白いです。

ただ、「グエムル」を観た時のような衝撃はちょっと弱かったですね。慣れてしまったということもあるかと思いますが、「グエムル」の時の街中に突然怪物が出現して人々を襲っていく描写には興奮したのを覚えています。今回もオクジャが街中を暴走するのですが、それは恐怖ではなく、あくまでも愛らしい大きな動物の暴走にとどまります。優しいオクジャと少女ミジャの友情が、強欲な企業によって脅かされ、そこに動物愛護団体などが絡んで、食の問題や生命とは何かを問いかけます。ただそれも予想通りの展開といってもいいかもしれません。

この作品は、ブラッド・ピットの映画製作会社プランBとジュノ監督が組んで製作したNetflixオリジナル映画ということもシナリオに影響しているのかもしれません。映画的ではあるのですが、どこかテレビ視聴を意識した、どっちつかずの作りになっていたような気がするのです。余談ですが、今作は第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されたのにもかかわらず、ネット配信用の「コンテンツ」ということで、「映画」と捉えるべきなのかなど賛否両論を巻き起こしたことはニュースでも大きく取り上げられましたね。

劇場公開が先かネット配信が先かといった議論はしばらく続くと思いますが、これからの時代、正直私は「映画」として監督たちが制作しているのであれば、劇場公開にこだわり続けることは意味がなくなっていくと考えています。劇場と同時配信、もしくはネット配信の後に大きなスクリーンでということで劇場公開されるというケースも増えると思います。要するにこれまでの興行会社(劇場)との慣習をどう変えて、お互いにメリットのある形を見出していくかということではないでしょうか。

ジュノ監督の「スノーピアサー」にも出演したティルダ・スウィントンに加え、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノら豪華キャストの怪演は素晴らしく、作品の娯楽性をより一層高めているのですが、描写やテーマ性が、全体的には角が取れた、丸く収まった作品になってしまっているのが惜しいところでしょうか。この作品を韓国資本だけで制作していたらまた違った作品に仕上がっていたかもしれません。

 

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とはいえ、ラストシーンはミジャとおじいさんが食事をするシーンで終わるあたりは「グエムル」などに通じるものがあり、ジュノ作品であることに間違いなく、にやりとさせられました。私の中で単にジュノ監督への期待のハードルが高くなってしまっての感想なので、ジュノ作品が好きな方もそうでない方も是非観て欲しい快作です。

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