ミケランジェロ・アントニオーニ監督作品「太陽はひとりぼっち」がリバイバル上映、男女のはかない恋愛感情と虚無感を描き“愛の不毛”を問う

イタリアの名匠ミケランジェロ・アントニオーニの監督作品「太陽はひとりぼっち」(1962年)が、フランス映画界を代表する名優たちの主演作を集めた「華麗なるフランス映画」(東京・角川シネマ有楽町)でリバイバル上映されている。アラン・ドロンの引退表明や、セクハラを告発する「#Me Too」へのカトリーヌ・ドヌーヴの逆告発などで話題を集めているフランス映画界だが、この時代に名作がスクリーンで見られるのは貴重である。

 

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アントニオーニ監督作品には私も多大な影響を受けた。「太陽はひとりぼっち」は、都会に生きる男女のはかない恋愛感情と虚無感を描いた恋愛ドラマ。「情事」「夜」に続く「愛の不毛」3部作の最終章で、イタリアとフランスの合作。

 

当時人気絶頂の美青年俳優アラン・ドロンと、気怠い魅力を放つ女優モニカ・ビッティを起用。極力台詞を排したような演出で、画と音と間で物語を語っていく手法が強烈だった。恋愛ドラマではあるが、現代社会の中で人を愛することとはどういうことなのか、男と女の関係とは、さらには生きるとは、自分の存在とは何なのかを考えさせられる。

 

徹夜で別れ話をしたであろう早朝の男女の倦怠感。フランスやイタリアを舞台にしながらも、どこか未来的で、時代や場所を特定させないような空間設計。間違いなく人間の男女の話を描きながらも、描けば描くほど、語れば語るほど、なぜか空しくなっていくようなストーリーをアントニオーニ監督は描き続けたように思う。

 

アントニオーニ監督独自の解釈や視点でありながら、最終的には普遍的なものを描いているからこそ、半世紀以上経った今も傑作として上映し続けられているのであろう。宇宙的な視点でもあり、霊的な視点といっても過言ではないかもしれない。建物を捉えたショットなどは、小津安二郎監督作品にも通じるものがあるとさえ私は感じる。

 

恋愛で悩んでいる方、生きることに退屈な方、そしてまだ本作を未見の方には是非観て欲しい作品です。映画の見方や異性に対する考え、人生に対する考えが変わるかもしれない。

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