8月の夏休みを利用して、ようやくデヴィッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス リミテッド・イベント・シリーズ」(テレビ放送時の邦題は『ツイン・ピークス The Return』)をゲオでDVDを借りて一気観した。なんとも夢の中のような幸福な時間を久しぶりに過ごすことができた。全18エピソードのドラマであるが、これは壮大な「映画」である。
ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズ Blu-ray BOX
1990年代に日本でも社会現象を巻き起こした大ヒットドラマ「ツイン・ピークス」の25年後を描くもの。学生時代に「ツイン・ピークス」の世界に陶酔してから25年も経ったのかと感慨を覚えずにはいられない。そして再びリンチ監督の頭の中を覗き見ることができたわけだが、その作品世界は期待と想像を遥かに上回るものであった。
あの独特な音楽が流れ、冒頭のツイン・ピークスの山と滝が落ちる風景が映し出された途端に、一気にあの倒錯した異世界に引き込まれてしまう。主人公のクーパーFBI捜査官を演じるカイル・マクラクランが出てくるなり鳥肌がたち、しかも今回は一人3役を演じているではないか。
また、もう一人の主人公と言える殺害されたローラ・パーマーを演じたシェリル・リーが、いい感じで歳を重ねた姿での登場には目頭が熱くなったほど。おお、ローラだ! その他にもドラマシリーズのレギュラメンバーがいい感じに老いた姿で登場する度にニヤけてしまった。
シーズン1、シーズン2で未回収のままだった謎はこういうことだったのかとか、その謎がさらに訳がわからなくなっていったり、今回はリンチが全話監督したということもあって、やりたい放題な印象なのだが、それがまたたまらなく面白いのである。中でもエピソード8は圧巻だった。
70歳を超えてもなおこの創造力。しかもその創造力は唯一無二のリンチワールド。駄目な人は全くダメで付いていけないと思うが、一度ハマったら抜け出せなくなるほど陶酔してしまう。いったいどうしてなのか? グロいし、キモいし、わけがわからないにもかかわらず、引き込まれてしまう魅力的で悪夢的な世界。人間が本来持っているダークな側面をリンチは確信犯的に映像化しているから刺激を受けるのだろう。
ローラの絶叫が頭から離れない。
間違いなく今年観た「映画」のNo.1作品だ!