今日は早稲田松竹で「哭声 コクソン」と「お嬢さん」の2本立てを観てきました。改めて韓国映画の映画的クオリティの高さとオリジナリティの底力を見せつけられました。ナ・ホンジン監督とパク・チャヌク監督というこの才能が同時代に活躍している韓国映画が羨ましく思いました。
「チェイサー」(08年)と「哀しき獣」(10年)でその才能を一躍知らしめたホンジン監督。「チェイサー」は犯罪スリラーでありながら、その躍動感とテンポの良い展開でぐいぐいを観客を引き込み、徐々に殺人鬼の恐ろしさと犯人を追う者の焦燥感、そして被害者の哀しみがラストに向かって緊張感たっぷりに描かれます。
「哀しき獣」は「チェイサー」をさらに超えるクライムサスペンスで、罠にはめられて追われる身となった男が、闇に潜む真実を暴き出し復讐していく姿を疾走感とリアリティ、圧倒的な迫力のバイオレンスでもって描き出していきます。「チェイサー」を観た時はもの凄い才能が現れたなと驚嘆しましたが、「哀しき獣」を期待をはるかに上回る傑作でした。
そして「哭声 コクソン」は、これまでと同系のサスペンススリラーでありながら、得体の知れない「悪」、恐怖を描き、前2作を超える骨太な作品となっていました。中でも日本からホンジン組に参戦した國村隼の存在感は素晴らしく、韓国の第37回青龍映画賞で外国人俳優として初受賞となる男優助演賞と人気スター賞をダブル受賞しました。観終わった後に、腹の底にこれまで味わったことのない恐ろしさが残る作品でした。
「JSA」(00年)、「オールド・ボーイ」(03年)、「親切なクムジャさん」(05年)のチャヌク監督最新作「お嬢さん」は、英国の人気ミステリー作家サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を原案に、舞台を日本統治下の韓国に置きかえて描いたサスペンスドラマです。残虐でエロチックな要素がふんだんに盛り込まれ、まるで秘め事を覗き見をしているような錯覚に陥る作品でした。アート作品の高みに到達しています。
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誤解を恐れずに言えば、ホンジン監督もチャヌク監督も変態監督です。しかし、独自のオリジナリティとイマジネーションが素晴らしく、2作品とも上映時間が約2時間半あるのですが、時間は感じません。韓国映画の現在地を知りたい方、映画的な刺激に飢えている方などにオススメの2作品です。