幻想的な宇宙や天地創造を想起させる圧巻の映像、テレンス・マリック監督「ツリー・オブ・ライフ」の映画的記憶に浸って欲しい

伝説の映画監督テレンス・マリック。1973年のデビュー作「地獄の逃避行」でアメリカ映画界屈指の作家との評価を受け、「天国の日々」(1978年)でその才能を決定的なものとし、特に陽が暮れる前のマジックアワーを活かした映像美は映画的なスタンダード(伝説)となりました。もちろんリアルタイムでは劇場で観ることはできなかった世代なので、約20年ぶりに手掛けた「シン・レッド・ライン」(98年)の公開時には興奮したのを覚えています。

寡作のマリック監督は「ニュー・ワールド」(05年)を経て、「ツリー・オブ・ライフ」(11年)完成させました。一貫して人間と自然をモチーフに描き、同作でも親と子、特に父と息子の確執を題材とし、その葛藤を瑞々しい映像の中に浮き彫りにしながら、人生や生命にまで思いを巡らせた作品になっています。

しかもキャストには、ショーン・ペン、ブラッド・ピット、ジェシカ・チャステインという最高の俳優を迎え、ブラピはこの作品を実現させるために製作にまで名を連ねています。ブラピが演じた1950年代テキサスの厳格な頑固親父は観ていて痛くはありますが、どこか人間的な弱さを持った憎めない人物としても描かれていると思います。そんな頑固親父との確執から心に深い喪失感を抱いて中年になった息子ジャックをペンが味わい深く演じています。

作品は、まるでジャックの記憶に分け入るように展開し、マリック監督の映像世界、流麗な語り口に深く包み込まれるような感覚に陥ることでしょう。頑固親父、夫に逆らえない優しい母、そして兄弟たちとの思い出、家、町…。時代や境遇は違えど、誰しもが持っている懐かしき記憶がそこには描かれています。

マリック監督自身の内面が映像に織り込まれ、さらに幻想的な宇宙や天地創造を想起させる大自然の映像は圧巻。普遍的な家族の絆を描きながら、人間の存在、宗教的な贖いと受容の問題にまで作品世界は広がっていきます。そんな映像とリンクする音楽も素晴らしくマリック版「2001年宇宙の旅」を評されています。もはや凡人にはついていけない境地まで達している感はありますが、シンプルにその映像と言葉、音楽を浴びて、生命のDNAの螺旋ループに巻き込まれるように映画的な記憶の中に浸ればいいのだと思います。

プレスシートは、英語で書かれたタイトルがのった半透明の表表紙をめくると、父親の手に包まれた赤ん坊の小さな足の裏が表紙写真になっています。続いてブラピ、ペンの写真とともにイントロダクション、マリック監督の解説があり、中ページは半見開きとなっており、作中のカットがカラフルに配列され、めくると映画評論家やオピニオンらによるコメントが掲載されています。そしてキャスト紹介、場面写真とともに貴重なプロダクション・ノートが掲載されています。

映画の映像的な快楽を得たい方、もしくは生きることに意味を見出せなっている方、自分の存在を見つめ直したい方などにオススメの作品です。圧倒的なマリックワールドにのみ込まれることでしょう。

ツリー・オブ・ライフ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
2011年/アメリカ映画/カラー/ヴィスタサイズ/SRD/2時間18分
提供:フォックス・サーチライト・ピクチャーズandリヴァー・ロード・エンターテイメント
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

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