コーエン兄弟の美学が貫かれた新しき西部劇「トゥルー・グリット」、壮絶な追跡の果てに感動のドラマが待っている

アカデミー賞「ノーカントリー」(07年)、「ファーゴ」(96年)で米アカデミー賞を受賞したコーエン兄弟が、ジョン・ウェイン主演の名作西部劇「勇気ある追跡」(69年)をジェフ・ブリッジス主演でリメイクした「トゥルー・グリット」のプレスシートは非常に重厚な作りとなっています。西部劇らしく、西部の町にお尋ね者の似顔絵が貼り出されているような褪せた感じの厚手の紙質でなんと全44ページ(表紙裏含む)。配給会社の作品に賭ける思いが伝わってきます。

父親を殺された14歳の少女マッティが、犯人を追跡するため、隻眼の凄腕連邦保安官コグバーンを雇うのですが、コグバーンは元泥棒で大酒飲みの自堕落な男。彼を信用できないマッティはコグバーンに同行して犯人を追うことになるという追跡劇。コーエン兄弟の作品はいつもどこか冷めた目線で描かれていて、この作品でも善人と悪者の闘いという西部劇的な描き方はしません。

でも、登場人物を冷徹に見つめる視線がフィクションでありながらリアルなドラマを生み出しています。そして、冷めてはいるのですが、その根底には人間への愛があるからこそ、観ている側はいつの間にか心が熱くなるのだと思います。

「バートン・フィンク」(91年)でカンヌ国際映画祭3冠も受賞しているコーエン兄弟の作品のテーマに通じる「追跡」を布石として新たに挑んだ作品で、壮絶な追跡の果てに感動のドラマが待っています。製作総指揮にスティーブン・スピルバーグが名を連ねており、コーエン兄弟の原点に回帰した集大成として評価されています。

マティには、1500人のオーディションから選ばれた新星ヘイリー・スタインフェルドが演じ鮮烈なデビューを飾りました。コグバーンには名優ジェフ・ブリッジスが扮し、さらにマット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパーらの実力派が脇を固めています。撮影監督には「バーバー」(01年)のロジャー・ディーキンスなど優秀なスタッフが顔を揃えています。

勇気と復讐の果てに待っているものは何なのか? コーエン兄弟の美学が貫かれた作品です。

トゥルー・グリット スチールケース仕様 [Blu-ray]
2010年/110分/シネマスコープ/DTS/SRD/SDDS/SR(シアンダイ)
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

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