ジュゼッペ・トルナトーレ監督の「シチリア!シチリア!」(2009年)は、イタリアはシチリア出身の監督自身の半生を描き出した人生讃歌です。
07年に暴漢に襲われてしまった監督は生死の境を彷徨うのですが、回復したことを機に、改めて生きる喜びを実感したといいます。そんな監督がいま一度シチリアを舞台に人生の素晴らしさを描き切ったのが本作です。1930年代から80年代までの世界中の主な出来事を織り交ぜながら、ある家族の愛と絆と人々の人生模様を描いています。
監督はプレスシートの中で語っています。28歳(1956年生まれ)までシチリアのバーリアで過ごしたそうで、私も大好きな一本、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「山猫」(63年)に登場するドン・ファブリツィオが、「17歳になるまでにシチリアを出なければ、シチリア人の欠点が身に染み付いて取れなくなってしまう」と言っていたことをあげ、自分もそうであったと述懐しつつ、それでもシチリア人であることを誇りに持っているとし、自分の子供時代やシチリアのすべてを映画にして、その素晴らしさを世界中に伝えたかったと述べています。
ちなみに本作の原題でもあるバーリアとは、イタリアはシチリア州パレルモの町「バゲリーア」のことで、地元の方言でそう呼ばれているとのこと。まさにそこに生まれ育った監督でしか描けない自伝的な作品なのです。当時のシチリアの自然や町並み、そこに生きる人々の様子を生き生きと描くとともに、映画への愛が詰まった一代叙事詩になっています。
トルナトーレ監督の「ニュー・シネマ・パラダイス」(89年)は、私を映画で生きていくことを決定づけた1本です。映画っていいな、フィルムって味わい深いな、あの夢の世界に入ってみたいな、初恋っていいな、人を愛するっていいなと、いろんなことを「いいな」って思わせてくれた作品です。ラスト、昔の映画のキスシーンばかりがつなぎ合わされたシーンには涙が止まりませんでした。
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シチリアと言えば、一方でマフィアの発祥地として血なまぐさい話が未だにありますが、それはそれでその地の歴史を知る上で重要な要素であり、「ゴッドファーザー」好きな私としても死ぬまでになんとかシチリアに行ってみたいと願っています。
「ニュー・シネマ・パラダイス」以来組んでいるエンニオ・モリコーネの音楽も相変わらず素晴らしく、甘く切ない、ノスタルジックな音色はトルナトーレの映像を引き立ててくれます。旅や食が好きな方にもオススメな作品だと思います。ワインが飲みたくなってきました。
2009年/イタリア映画/SR、SRD/151分
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
配給:角川映画