大学時代のゼミの教授でもある四方田犬彦先生の著書「日本映画史110年」(集英社新書)を久しぶりに読み返しました。いや、2000年刊行の「日本映画史100年」を読んで以来なので、新たな論考を加えて14年に刊行されたこの増補改訂版は初めてということになります。
読みながら映画について必死に勉強しはじめていたあの頃を思い出しました。一度は頭に入れた日本映画史も改めて本書を読んでいると新たな発見がありました。というか改めて四方田先生の論考の鋭さを味わい、その的確なまとめ方に学ぶ喜びを感じました。
最初に日本映画の特徴について語られ、続いて年代順にわけて日本映画の歴史がわかりやすくまとめられています。活動写真(1896〜1918)、無声映画の熟成(1917〜30)、最初の黄金時代(1927〜40)、戦時下の日本映画、植民地・占領地における映画製作、アメリカ占領下の日本映画(1945〜52)、第二の全盛時代へ(1952〜60)、騒々しくも、ゆるやかな下降(1961〜70)、衰退と停滞の日々(1971〜80)、スタジオシステムの解体(1981〜90)、インディーズの全盛へ(1991〜2000)、製作バブルのなかで(2001〜11)と、全12章の構成になっています。
作家論や作品論ではなく、改めて、日本映画がいかにその時代の影響を受けて作られてきたのかという歴史が記されています。映画に限らず、政治や宗教、戦争、国際情勢、文化的視点などと、関係するあらゆる方面から語られるその日本映画史観には驚嘆させられます。
次世代の我々は今後どのように日本映画を語り継いでいくのか、どのような日本映画を制作していくべきなのかを考えさせられました。ここで論じられている日本映画史を知らずに映画を語ることはできませんし、知った上で作る映画はまったく異なってくると思います。
過去の日本映画とこれからの作られる日本映画の見方が変わる書物です。
四方田先生の壮大な知識の宇宙に陶酔しながら、次は「署名はカリガリ 大正時代の映画と前衛主義」(新潮社)を読みたいと思います。