7月13日より「グッバイ、ゴダール!」が公開される。この作品は、「アーティスト」(2011年)でアカデミー賞の5部門を獲得したミシェル・アザナヴィシウス監督の最新作で、第70回カンヌ国際映画祭に正式出品された。
「ゴダール」とはもちろん、1960年代フランスのヌーヴェルヴァーグの中心的存在で、「勝手にしやがれ」や「軽蔑」、「気狂いピエロ」などの作品で「映画を変えた」と言われた映画監督ジャン=リュック・ゴダールのことである。
原作は、女優、作家であり、ゴダールの2番目の妻でもあったアンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説「それからの彼女」。19歳の哲学科の学生だったアンヌが、ゴダールと出会って恋に落ち、「中国女」に主演して結婚。世界中から注目を集めていた天才監督と過ごした青春の日々が、フランスの五月革命が勃発し、揺れるパリという激動の舞台の中で描かれる。
まず、この生きる伝説とも言えるゴダールを描こうと決意したアザナヴィシウス監督が凄い。一歩間違えれば映画ファンからのブーイングの嵐は目に見えている。しかし、アザナヴィシウス監督は敢えてこの天才を描くことに挑み、見事に映画として昇華している。
さらにゴダールを演じたルイ・ガレルに拍手を送りたい。ゴダールという天才の孤独や偏屈さとともにどこか憎めない愛嬌もある面をユーモアと敬意を込めて演じていることが伝わってくる。ちなみに彼の父親は映画監督のフィリップ・ガレルだ。
そして、ステイシー・マーティンがとても魅力的にア愛らしく、セクシーにゴダールの新たなるミューズ、アンヌを演じている。ラース・フォン・トリアー監督「ニンフォマニアック」で映画デビューし、ファッショニスタとしても注目されている。
アンヌの原作やゴダールの作品・言動から、60年代のフレンチカルチャーの匂いを感じることができる上に、なぜゴダールが商業映画との決別を宣言したのか、その経緯を伺う知ることができるのも貴重だ。
初代ミューズであるアンナ・カリーナや、ブリジット・バルドー、ジーン・セバーグ、ジャン=ポール・ベルモントといったスター俳優を起用し、アメリカ映画を意識した新たな映画作りで世界の映画史にその名を刻んだゴダール。その創作姿勢の最初の過渡期を知ると、その後のゴダールの作品に見方が変わってくる。