映画の可能性をまた新たに切り開いたクリストファー・ノーラン監督の最新作「ダンケルク」は、まるで戦場の最前線に放り込まれたような感覚に陥る

クリストファー・ノーラン監督の最新作「ダンケルク」を公開初日の初回に観てきました。いやあ、凄い、この映画は凄い。何が凄いって、普通に2D字幕版で観たのですが、ノッケからまるで劇中にいるような感覚に陥る映画なのです。過去にも似たような狙いで作られた疑似体験的な映画はあったと思うのですが、それでも今まで感じたことのないような感覚に引き込まれてしまいました。

「メメント」、「ダークナイト」2作、「インセプション」、「インターステラー」と新作の毎に観客をあっと驚かせ、映画の素晴らしさと可能性を示してきたノーラン監督。そんなノーラン監督が初めて実話をもとに描いた戦争映画で、史上最大の救出作戦と言われる『ダイナモ作戦』が展開された、第2次世界大戦のダンケルクの戦いをこれまでの戦争映画とは一線を画す斬新なスタイルで描き出しました。

主に陸海空と3つの視点でストーリーが展開するのですが、フランスの北部ダンケルクの海岸に、ドイツ軍によって追いつめられた40万人の英仏連合軍兵士の救出劇が描かれるのですが、陸地の端に追いつめられた兵士たちの焦燥感と空からの敵機による砲撃になすすべもなく倒れていく虚無感、やっと救出船に乗って脱出できたと思ったら攻撃されて無惨に沈没していく船内での閉塞感、そして空から味方を救おうと奮闘する戦闘機パイロットの達観した視線。

いかに生き残るか、主人公の兵士たちは卑怯と言われても必死に脱出を試みます。そんな行動を誰が責められるでしょうか。脱出する兵士、空から味方を援護するパイロット、兵士たちを救出に向かう民間の船主たち、そして軍の指揮官。映画は徹底してこれらの視点で描かれドイツ軍兵士の姿はほとんど登場しません。

登場人物たちのバックストーリーを描けば3時間くらいになってしまうところを、ノーラン監督は排除して、徹底的に救出劇にのみ焦点を絞って描いていきます。また、3つの視点が入り交じるとともに、時系列も前後させて描くあたりはノーラン監督ならではの演出で一筋縄ではいきません。

兵士役には若い俳優を抜擢し、肝になる役にはトム・ハーディ、キリアン・マーフィ、ケネス・ブラナー、マーク・ライランスといった演技派を配し、物語の要所を締めています。しかしながら、まるで無声映画のように台詞は最小限に抑えられ、敵機の襲来や銃撃と砲撃、波、沈み行く船などの音で成り立たせています。そして、ハンス・ジマーの音楽がこの映画の臨場感を高めています。

 

ダンケルク アルティメット・エディション <4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(初回限定生産/3枚組/ブックレット付) [Blu-ray]

 

次はIMAX版で、その次は4DX版でと何度も観たくなる映画です。フィルム撮影とCGを極力配したリアルな撮影による映画的臨場感が堪能できる作品です。そして、戦争の悲惨さ、愚かさを痛感するとともに、生命の尊さを改めて考えさせられました。

ソル・ギョングの叫び、イ・チャンドン監督の眼差し、「ペパーミント・キャンディー」を観ずして人生は終われない。ラストシーンは映画史に残る名シーンだ

約20年、韓国映画には未だに感動させられるとともに、嫉妬するほど素晴らしい映画が製作し続けられています。1999年のイ・チャンドン監督「ペパーミント・キャンディー」を最初に観た時は、感動のあまり全身が痺れたようになって、しばらく動けなかったのを覚えています。

ある男の半生と韓国現代史を重ね合わせながら、時間を遡る構成で描かれた傑作。一人の男が川の近くの鉄道で自殺しようとするという衝撃のシーンで始まるのですが、そこに至るまでの人生が逆再生のように描かれ、男が家族や仕事など全てを失ったことが次第に明らかになっていきます。

主演は韓国の名優ソル・ギョング。約20年前、まだ純朴だった学生時代へ戻ったラストシーンは映画史に残る名シーンと言えるでしょう。あの時に感じた風、匂い、太陽に光、そして純真な恋心。まだ夢も希望も持っていた主人公のなんとも言えない表情をソル・ギョングが見事に表現しています。

平凡な、純真だった男がいかにして運命に翻弄され、人生の残酷さを味わっていくのか。歳を重ねていく中で人はいかにして大切なものを失っていくのか。こんなはずではなかった人生を時代のせい、社会のせいにもできるかもしれないが、失ったものに気がついた時には、もう後戻りは出来なくなっていた…。

夢や希望を抱いていたはずの20年前のあの時の男の目が、思い返すと泣いているように見えるのは私だけだろうか。人生の残酷さをこんなにも静かに映画的に叩き付けてくる映画を私はそれまで観たことがありませんでした。あの日に戻りたいというソル・ギョングの悲痛な叫びが今も私の胸に響いてきます。

タイトルのペパーミント・キャンディーとは、ムン・ソリ演じる初恋の女性からもらったハッカ飴のことを指しているのもさらに感動を呼びます。映画だからこその表現方法を使って描くチャンドン監督の素晴らしい才能に感服せざるを得ません。

 

ペパーミント・キャンディー [DVD]

 

パンフレットやプレスシートはありませんが、DVDはもちろんコレクションしていて、時間があれば見返し、日常で何かに突き当たった時は、この映画のシーンが私の脳裏を過ります。それくら私の映画人生に影響を与えた一本です。

エバーラストのプロスタイルMMAオープンフィンガーグローブを購入し、「スパルタンX」のジャッキー・チェンになった気分でトレーニング再開!

映画業界で20年近く頑張ってきたのですが、最近体力の低下と筋肉のゆるみを感じるようになったので、休みの日は泳いだり、ジョギングや階段ダッシュ、筋力トレーニングに励んで、ほそマッチョを目指しています。そんな時、見事にピンポイントなネット広告が目に入り、大人買いをしてしまいました。

 

エバーラスト(Everlast)プロスタイルMMAオープンフィンガーグローブ Pro Style MMA Grappling Gloves 7778B 黒 S/M

 

いえ、大人買いといっても高額な大人買いではありません。それ本当に必要なの? というものです。何かというと、オープンフィンガーグローブです。しかもボクシングブランドのエバーラストのプロスタイルMMAオープンフィンガーグローブ グラップリンググローブ(黒)。

女性は特に「それ何ですか?」って感じだと思いますが、指先がむき出しになっていて、主にパンチした時に拳の骨をガードするグローブで、ボクシングではなく「K−1」などの格闘技の試合で選手がはめているものを思い出していただければと思います。

なぜ購入したのかというと、半年ほど前にエクササイズ用などで売られているパンチングサンドバッグ(空気を入れて、パンチすると起き上がってくるあれです)を購入し、バンバンとパンチして汗をかいていたのですが、さすがに殴り甲斐もなくなって飽きてしまったのですね。ということで、このグローブをはめればやる気も再燃し、トレーニングできると踏んだわけです、

余談にしても全然映画と関係ないですね、と突っ込まれそうですが、私の中でオープンフィンガーのグローブといえば、「スパルタンX」(84年)です。ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウという香港映画界の三銃士が共演した痛快アクション映画で、この中でジャッキーとユン・ピョウがグローブをはめてトレーニングや闘っていた姿が脳裏にすり込まれていたわけです。もちろん劇中のグローブはエバーラストのグローブではありませんが。

ジャッキー・プロジェクト世界進出第1弾と銘打ったこの作品はスペインのバルセロナでロケを敢行。数々の観光名所をバックに、ジャッキーのスケボーアクションやバイクとカーアクションも満載で、ヒロインを演じた美女ローラ・フォルネルとのエロティックなシーンもジャッキー作品ならでは。しかし、監督はサモ・ハンです。

謎の集団に誘拐された美女を救出しようとする3人組の活躍を描くストーリーですが、最大の見せ場はやはりクライマックスのお城の中での決闘シーン。実際に身体を張った闘いは何度観ても観ているこちらの身体も熱くなります。ちなみに、いま大人気のお笑い芸人みやぞんが言った「俺たち3人三銃士!」はこの「スパルタンX」からきているわけです。公開当時にはファミコンのゲームにもなり、当時の男の子たちのハートを虜にしました。

購入したオープンフィンガーグローブをはめてみると、なんだか力が漲ってくるような気がします。恐らく気のせいなのでしょうが、「スパルタンX」を観て飛び跳ねていたあの頃を思い出すと、トレーニングのやる気が出てくるのは不思議なものです。皆さんもそんな思い出の一品があるのではないですか?

生きる伝説の映画人クリント・イーストウッド、「許されざる者」はある種の贖罪的な作品でありながら最大のカタルシスを得られる西部劇だ

クリント・イーストウッド、御年83歳。生きる伝説の映画人と言っても過言ではないでしょう。俳優としては、台詞を吐かなくても苦みばしった表情ひとつで全てを伝えられる男。監督としては、彼の生きてきた映画人生を反映した独自の作品を撮れる男。クリント・イーストウッドという一人の男が、一つの「映画」のジャンル、歴史になっているとも言えるのではないでしょうか。

出世作のマカロニウェスタンや「ダーティハリー」シリーズなどで、劇中で多くの人を撃ち殺してきたイーストウッドが監督した異色の西部劇「許されざる者」(92年)は、映画ファンへ向けたある種の贖罪のような映画でした。

イーストウッドが演じるかつて女、子供まで撃ち殺したと言われる無法者の男は、自分を立ち直らせてくれた愛する妻を失い、今は貧しい農夫として2人の幼い子供と静かに暮らしていたのですが、子供の将来も考えて、若いガンマンからの賞金稼ぎの話に乗ります。

どんな理由であれ、人を殺すことの罪の重さ、一発の銃弾の重さをイーストウッド監督は静かに描きます。自分が犯してきた過去の過ちについては、罪の意識を背負いながら死ぬまで生きていくのです。そんなイーストウッドならではの映画の中での生き様が伝わってきます。

しかし、人間の本性というものはそんなに簡単に変われるものではないことも訴えてきます。ひとたび自分の中の怒りの炎に火がつくと、かつてのマカロニウェスタンで演じた無法者や、「ダーティハリー」で演じた凄腕刑事ハリー・キャラハンのごとく、「悪党」を撃ち殺します。矛盾するようですが、ここがイーストウッド作品の最大のカタルシスにもなるわけです。

その時の恐ろしいまでの目つき、表情は、イーストウッドにしか表現できないものでしょう。でも、観る側は、歌舞伎役者が見得を切るがごとく、イーストウッドの凄み=見得に対して、「待ってました!」とばかりに心の中で喝采を送ることになるのです。

 

許されざる者 ブルーレイ&DVDセット 豪華版(初回限定生産) [Blu-ray]

 

この「許されざる者」は、イーストウッドの師匠でもあるセルジオ・レオーネ監督とドン・シーゲル監督に捧げられているのもファンには堪らない感慨を覚えます。本ブログは、今後もイーストウッド作品を取り上げていく予定です。

映画に目覚めはじめていた時期に観た名作「レインマン」、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズの共演で人を思いやる心に気づかせてくれる感動作

手元にプレスシートやパンフレットはないのですが、思い出の作品のスチールが出て来たので、その作品について語りたいと思います。その写真は2人の男がオープンカーに乗っている場面で、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズが共演した「レインマン」(88年)です。

このバリー・レビンソン監督による作品は、私が当時中学生、思春期真っ盛りながら、映画に目覚めはじめていた時期に繰り返し観た名作です。「卒業」(67年)、「真夜中のカウボーイ」(69年)などの名優ホフマンと、「トップガン」(86年)、「ハスラー2」(86年)などでトップスターに上り詰めたトム・クルーズが共演ということで観たのですが、観終わった後で深い感動に包まれたのを覚えています。

トム演じるチャーリーは、絶縁状態にあった父親の訃報を聞いて遺産目当てに帰省するのですが、その遺産が今まで存在する知らなかったホフマン演じる自閉症の兄レイモンドに相続されることになっていたことを知り、病院から連れ出してロサンゼルスへ向かいながら交流していくというお話。

人生に行き詰まった金目当てのズルい弟と孤独な自閉症の兄。自閉症につけこんでチャーリーは遺産を横取りしようとするのですが、旅の途中でレイモンドの特殊な能力に気づき、力を合わせて一攫千金を狙うことに。そして、兄弟である2人が幼くして離ればなれになった理由が明らかになっていきます。

芸達者なホフマンの演技派は素晴らしく、また名優ホフマンを相手に嫌な奴を演じるトムも負けていません。80年代の古き良きハリウッド映画の匂いに満ちた作品で、レビンソン監督の確かな演出とハンス・ジマーの音楽が兄弟のドラマを引き立てます。

 

レインマン アルティメット・コレクション [DVD]

 

次第に本当の愛に気づいていく、人を思いやる心を得ていくトムの演技も秀逸で、映画でしか味わえない感動を得ることが出来る作品です。未見の方には是非観て欲しい一本です。

ガル・ガドットの美しさが炸裂する痛快アクション大作「ワンダーウーマン」、クリストファー・ノーラン監督だったらどう料理するか!?

全世界で大ヒットとなった話題の映画「ワンダーウーマン」を観てきました。なるほど、ここまで女性戦士が痛快に大活躍すれば大ヒットするのもわかるような気がします。それに主演のガル・ガドットがとにかく美しい。こんな美女戦士が華麗な剣さばきのアクションを披露しながら敵を倒しまくれば、男性だけでなく、女性も惚れ込んでしまいます。

アメコミのDCコミックが原作で、ヒット映画「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」にも登場した人気キャラクター。女性だけの一族出身で男性を見たことがないプリンセスというのも物語の重要な要素になっています。

それに予想した以上に物語設定がしっかりと深いですね。神の誕生から始まり、悪の神の存在が人間世界に今も影響を与えているということで戦争を終結させ、人々を救うには暴力的な悪の神を倒さねばならないというのです。この辺の強引な設定の持っていき方はアメコミやハリウッド映画の得意とするところ。はっきりとは示されませんが、恐らく第二次世界大戦を背景にもってきて、ドイツ軍のガス兵器使用を阻止しようと奮闘する姿が描かれます。

このDCコミックの人気キャラクターを最新技術を駆使した実写映画で甦らせ、観客に受け入れられる作品に成立させたのは、DCやワーナー・ブラザースの戦略の勝利はもちろんですが、最大の成功の要因はやはり主演にガル・ガドットをキャスティングしたことでしょう。

その美貌に加え、母国のイスラエルで兵役経験があるというガルの本格的なアクションは痛快にして爽快。役作りのためにあえて体重を増やしたというのも画になって、美しいだけでなく強い存在感を引き立てています。しかもガル演じる美女戦士ダイアナはプリンセスで、男を知らずに育ったこともあり、とてもピュア。下手すると天然の部類に入ってしまいそうですが、人々を助けようと真っ直ぐに突き進んでいきます。

島に不時着した男性パイロット(クリス・パイン)を救いだしてからも興味津々。男女の関係を匂わすような意味深な会話のやり取りにもニヤリとさせられますが、純粋なラブストーリーもこの映画の見所の一つ。女性としての母性や愛らしさ、意志の強さとピュアな心を兼ね備えたダイアナをガルは見事に体現しています。

男性の観客は、最初は少しエロティックなシーンを期待してしまうと思いますが、途中から格好いい女性として惚れ込んでいることでしょう。ジャンヌ・ダルクを想起させるような強い女性像(ヒロイン像)についてはそれぞれ見解が異なるとは思いますが、そういったものは置いておいても、この映画は久々に女優で楽しめる映画だったと思います。

 

ワンダーウーマン<4K ULTRA HD&3D&2Dブルーレイセット>(初回仕様/3枚組/ブックレット付) [Blu-ray]

 

11月に公開されるDCコミックのスーパーヒーローが結集する映画「ジャスティス・リーグ」にもワンダーウーマンは登場し、続編も製作されることでしょう。バットマンやスーパーマンを凌駕する人気キャラクターの地位を確立し、ハリウッド映画の新しいページを開いたと言えます。願わくばクリストファー・ノーラン監督による「ワンダーウーマン」が観てみたいと思うのは、私だけでしょうか。

 

オドレイ・トトゥやクレームブリュレが大人気に! ミニシアター作品の象徴とも言えるジャン=ピエール・ジュネ監督「アメリ」

日本におけるミニシアターブームの象徴的な一本、フランス映画の「アメリ」。今は閉館してなくなってしまった渋谷のミニシアター、シネマライズで2001年11月17日より公開され、連日劇場の前には長蛇の列ができるロングランの大ヒットを記録しました。

テレビのニュースでも取り上げられるほど社会現象化し、ミニシアター文化の確立に貢献。ファッションや食といったカルチャーにも多大な影響を及ぼしました。その後の女性のライフスタイルの憧れになったほか、劇中に出てくるスイーツ、クレームブリュレやそれを割るスプーンも大人気となり、未だにクレームブリュレ=「アメリ」と紐づけられるといっても過言ではないのではないでしょうか。

それまでのミニシアター作品のヒット作でも、1年近くロングラン上映して、多くても5億円を稼げば大ヒットと言われていたのが、単館(ミニシアター)から拡大し、最終的に全国で興収16億円を稼ぎ出しました。映画の買付額は定かではありませんが、企画書段階で買い付けていたらしく、相当低い金額であったことから、もの凄い利益率だったことが推測でき、ビデオなどの2次使用からの収益を多く、噂では配給会社の自社ビル「アメリビル」が銀座に建ったとも言われています。

作品はというと、神経質な両親の元で育ったアメリは、空想の中で遊ぶことと、こっそりと悪戯をすることが好きな女の子に。そんなアメリは22歳になって、モンマルトルのカフェで働きはじめるのですが、青年ニノに出会って恋心を抱きます。でも、どうしたらいいか分からず悪戯を仕掛けてしまうというもの。

「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」のジュネ&キャロのジャン=ピエール・ジュネ単独の初長編作品で、それまでのダークな作品世界とは打って変わって、オシャレで不思議な世界が展開。アメリを演じたオドレイ・トトゥはこの一本で日本でも大人気となりました。

そんな「アメリ」のプレスシートは大切に保管していたのですが、今読み返してもオシャレで可愛らしい、配給・宣伝会社のセンスがうかがえるものとなっています。

映画が一本当たればビルが建つくらい、インディペンデントの映画の配給ビジネスに夢が持てた時代の象徴でもありますね。アメリだけでなくちょっと変わった人たちがたくさん出てくるお話ですが、女性の心理と空想世界が融合した、映画でしか味わえない、ファンタジックな時間が楽しめる作品です。

 

アメリ プレミアム・エディション[アメリ缶] [DVD]

 

2001年度作品/フランス映画/121分/ドルビーデジタルDTS
提供:ニューセレクト、テレビ東京、博報堂
配給:アルバトロス・フィルム

「スコセッシ流監督術」を読めば、巧みに計算し尽くされたマーティン・スコセッシ監督作品をより理解することが出来る必読の書

前回に続き映画本について紹介したいと思います。「名監督の技を盗む! スコセッシ流監督術」(発行:ボーンデジタル)は、監督が観客を映画の世界に引き込む、画作りの魔法を解き明かすもの。監督を志す人はもちろん、映画ファンにとってもその監督の作品をより深く理解することが出来る必読書となっています。

 

名監督の技を盗む! スコセッシ流監督術

 

本書のマーティン・スコセッシは現代アメリカ映画の最高の監督の一人です。スコセッシ監督作品を観たことがあるでしょうか? このブログを読んでくれている方はもちろん観ていると思いますが、スコセッシ監督は映画の歴史も熟知した映画愛のある博士であり、制作においては極めて「映画的な技法」を駆使して物語を語ることが出来る数少ない監督の一人でもあります。

また、俳優の良さを引き出しながらカメラワークやビジュアルで視覚的に物語を語ることが出来るところでしょう。スコセッシ監督特有の流れるようなカメラワークと編集、ナレーションで2時間だろうが3時間だろうが時間を感じさせない語り口は圧巻ですが、実は各シーンが巧みに計算し尽くされたショットから成り立っていることに気づく人はかなりのスコセッシファンか映画ファンだけでしょう。

例えセリフがなくてもカメラの動き一つ、ビジュアル的な記号だけで、物語を語り、登場人物の心情を表現するテクニックは簡単にマネできるものではなく、膨大な映画的知識があってこそそのテクニックが効果的に生かせるのでしょう。

シンプルな肩越しショットの使用やフリーズフレーム、フラッシュ、スローモーションなどはスコセッシ監督の定番技法ですが、ここぞというシーンでは凝りに凝ったスタイルと大胆な技法、独創的なショットを駆使するのです。そうしたシーンの積み重ねからの強弱が観ている観客を唸らせているのです。

そういったポイントが、「タクシードライバー」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「レイジング・ブル」「ディパーデット」といった作品を例に、著者のクリストファー・ケンワーシーによって丁寧に細かく解説されています。本書を片手に各作品のシーンを観直すとより映画を楽しむことができるものとなっています。

スコセッシ監督にとっては呼吸をするようなことなのかもしれませんが、今の日本でこうした映画的な表現が出来る監督は、ベテランでも極めて少ないのが現状です。映画は総合芸術だと言われますが、スコセッシ監督は巨匠となりながらも毎回映画的なチャレンジをしているのには頭が下がります。

若手監督とっては本書を読むと、映画的表現とは何か、映画の演出とは何かに気づかせてくれると思います。

ムック本「懐かしき俺たちのアメリカン・ニューシネマ『青春を駆け抜けた名作が今甦る』」に詰まった映画の素晴らしさ

今日はある映画ブックを紹介したいと思います。芸文社から6月に発売された「懐かしき俺たちのアメリカン・ニューシネマ『青春を駆け抜けた名作が今甦る』」です。これは素晴らしいムックで、名作が詰まっています。

 

懐かしき 俺たちのアメリカン・ニューシネマ 「青春を駆け抜けた名作が今蘇る」 (GEIBUN MOOKS)

 

いわゆる1970年代の「アメリカン・ニューシネマ」は、私の映画人生に多大な影響を与えた作品が勢揃いしています。しかし、このムックの巻頭にある説明文によると、そもそも「アメリカン・ニューシネマ」という定義は存在しないというではないですか。

1960年代後半から70年代にかけて起こったハリウッドの新しいムーブメント。それまでのハリウッド映画のスタイルとは異なる自由に作られた、時代や当時の社会を反映した作品。物語のテーマだけでなく、伝統を破壊した制作スタイルも支持されたものでした。

でも、それはある特定の作家たちが明確な意図で行ったものではなく、その時代性が偶然に産み出したものだったというではありませんか。

「ニューシネマ」という言葉は、67年2月号「Time」に掲載された無署名の記事「映画における自由がもたらす衝撃」の使われたもので、この号で大きく扱われたアーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」(67年)のことを指すものだったというのが定説とのこと。

さらに「アメリカン・ニューシネマ」という言葉は、映画雑誌「キネマ旬報」の記事で使用されたのが最初で、日本独自のものとのこと。勉強不足でしたが、ということは、やはり「アメリカン・ニューシネマ」は傑作「俺たちに明日はない」がムーブメントのはじまりだと言えるということでしょうか。

しかし、「アメリカン・ニューシネマ」に定義などなく、定義できない、新しい、自由な当時の映画を「アメリカン・ニューシネマ」とするのならば、それはそれでまた映画好きどもでひと晩もふた晩も議論しながら飲み明かせることでしょう。

このムックで紹介されている「アメリカン・ニューシネマ」作品についても、それぞれ取り上げていきたいと思っています。いつ観ても、何度観ても心が震える素晴らしい作品に溢れています。

ryusei wada制作の映像をYouTubeにアップ! テーマは「懐かしさ」です。

このブログサイトをスタートさせるのと同時に、過去にテスト撮影・編集した動画をYouTubeにアップしました。息抜きにでも観ていただければと思います。

3本アップしました。1本は「a omori」というタイトルです。私の父の故郷である青森の祖父母の家の近くの「道」をテーマにしたものです。数十年経ってもなぜかその家の周辺は私の幼少期の記憶のままです。そこにたどり着くまでのイメージをまとめてみました。

2本目の「sky001」は、美しい雲と夕方の太陽が交差した空を撮影したものです。当時住んでいたマンションの屋上から撮影しました。このサイトのヘッダーでも観ることが出来ます。

そして3本目の「nostalgia」は、電車の車窓からの流れ行く風景をセピア調にフィルムっぽくした映像です。「a omori」にも使用しているものです。

3本ともに共通しているのはいつかどこかの「懐かしさ」でしょうか。テスト的な映像ではありますが、こんな感性を大事にしていけたらと思います。

YouTube