「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」。昔々、アメリカで…。
セルジオ・レオーネ監督によるこの作品は、私が映画の道を歩むことを決定付けた一本です。ノスタルジー、バイオレンスとエロス、友情と愛、ノワール、記憶…、その極めて映画的な映像とドラマ、俳優陣、衣裳と美術、そしてエンニオ・モリコーネの音楽など、すべてが「映画」であると、当時中学生の私の頭を撃ち抜きました。
初めて観たのはテレビ朝日の日曜洋画劇場だったでしょうか。亡くなった映画評論家・淀川長治さんがあの独特なしゃべり口で解説していたのを思い出します。当時まだ映画の系譜についてよくわかっていなかった私は、ロバート・デ・ニーロが出演しているということで観たのだと思います。しかし、今思えばよくこの作品を地上波で放送したなと思いますね。
私は1920年代のマンハッタン・ロウアー・イースト・サイドを再現したウィリアムバーグ橋を背景に、幼少期の主人公たちが笛を奏でながら歩くシーンを観た瞬間に、この映画の世界に取り込まれてしまいました。当時のマンハッタンを知るわけがないのに、なぜか懐かしい風景だと感じ、こんな風に当時を再現してしまう映画の力に圧倒されました。
20世紀初頭にユダヤ人移民によって作られた結社「モッブス」の男たちの盛衰をバイオレンスとともに描いてはいるのですが、仲間との友情と裏切り、友だちの妹への淡い恋と失恋、切ない思い出などがノスタルジックに描かれた大人の寓話です。
レオーネ監督は、「ギャングスターに思いを馳せる人たちのために作った。現代文明の根幹をなす“犯罪の中における人間性と暴力”が最大のテーマになっている。語りたいすべてを語ったつもりだ」と語っています。「荒野の用心棒」(64年)といった、ハリウッド製西部劇に挑むかのような壮絶なバイオレンスのマカロニ・ウェスタンで名声を得たレオーネ監督の「青春のオマージュ」です。
店裏の物置部屋でバレエを踊るジェニファー・コネリー演じるデモラに恋をし、それを覗き見る少年ヌードルスの目が少女と合って一瞬隠れて戻った時には大人になったデ・ニーロになっていたり、裏切られたヌードルスが駅のロビーにある鏡を覗いた次の瞬間に年老いたデ・ニーロになっているというこの映画的なマジックには痺れます。しかも名曲「イエスタデイ」が流れます。
デ・ニーロはもちろん、親友マックスを演じたジェームズ・ウッズ、デボラの少女時代を演じたジェニファーと成人したデボラを演じたエリザベス・マクガバン、トリート・ウィリアムズ、チューズデイ・ウェルド、バート・ヤング、ジョー・ペッシ、ウィリアム・フォーサイス、ジェームズ・ヘイデン、ダーラン・フリューゲルという素晴らしいキャストが名演を見せています。
プレスシートは、当時わざわざ通信販売で購入しました。中に透かしページがある豪華な作りで、場面写真も素晴らしく、写真集を超えた、一生手元に残しておきたいプレスシートです。「映画とは何か」を思い出させてくれる傑作です。映画に興味を持った方は是非見て欲しい映画です。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ エクステンデッド版(初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]
1984年/アメリカ映画/205分/カラー
提供:東宝東和